初恋の行方〜謎の転校生〜
柏木君はそんな私を見てフッと笑うと、さっさと歩いてしまい、私は慌てて彼の後に着いて行った。トボトボと。



柏木君は慣れた足取りでしばらく歩き、立ち止まったのは『畑中家之墓』と刻まれた墓標の前だった。


「ここだよ」


柏木君は低い声でそう言い、私は小さく頷き、ゴクッと唾を飲み込んだ。


花を供え、墓標の前に立つと、胸の前で手を合わせて目を閉じた。


悠人君の穏やかな笑顔や、最後に見た寂しそうな顔と後ろ姿が目に浮かび、涙が頬を伝っていった。


悠人君、ごめんなさい。
本当は悠人君のこと、大好きだったのに、“はい”って言う勇気がなかったの。

後ですごく後悔して、今度は私から告白しようと思ったの。

でも、その“今度”というチャンスは、二度と来なかった……


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