初恋の行方〜謎の転校生〜
霊園に着き、無数の墓石が並ぶ丘の上を、俺は迷う事なく歩いて行った。


時刻は昼前といったところだろうか。澄み渡った空はどこまでも高く、陽射しは柔らかだ。


横を歩く川島美咲は、入口で買った花を大切そうに胸に抱え、緊張しているのか無言だった。



『畑中家之墓』と刻まれた墓標の前で立ち止まり、「ここだよ」と言うと、川島美咲は大きく澄んだ目で墓標を見つめた。


墓前に花を供え、胸の前で小さく白い手を合わせる彼女の横で、俺も手を合わせて目をつぶった。


悠人……

川島美咲を連れて来てやったぞ。嬉しいだろ?

俺はここで、おまえの日記帳を彼女に渡そうと思う。いいよな?

それと……


すまん。俺も川島美咲に惚れちまったよ。

おまえに悪いから諦めようとしたんだが、無理そうだよ。


今の俺にはそんな資格はないが、何とかしたいと思ってる。


なあ、許してくれるか?
頼むから、許してくれよ。


女をこんなに好きになったのは初めてなんだ。おまえなら信じてくれるよな?


これが俺の、初恋だって事を……


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