初恋の行方〜謎の転校生〜
「泣かせちゃったわね? 可哀相……」


俺が呆然としていると、どこからともなく紗耶香さんが現れた。


「見てたんですか?」


「見てたわよ、全部」


「悪趣味ですね。令嬢のすることじゃない」


俺はイライラが収まらず、ついそんな悪態が口をついてしまった。


紗耶香さんは一瞬ムッとしたようだったが、すぐに笑顔になると、


「もう終わりにしましょう? 目的は果たしたんでしょ?」


と言った。

確かに目的は果たしたと思う。しかし……


「いいえ、まだです」


と俺は言っていた。


「もっとあの子を虐めたいの?」


「紗耶香さん、“口出ししないでください”って言いましたよね?」


「ずいぶん機嫌が悪いのね?」


そう言って紗耶香さんは、俺の首に腕を回し、顔を近付けて来た。そして、


「消毒してあげる」


と言って濡れた唇を俺に寄せてきた。


その時、公園にやって来た親子連れが目に入り、


「人が来ましたから」


と言って、俺は紗耶香さんを俺の体から引きはがした。


紗耶香さんは不服そうだったが、俺はいまだ唇に残る川島美咲の温もりを、消さずに済んだ事にホッとしていた。


< 51 / 224 >

この作品をシェア

pagetop