One STEP



あたしが演劇部に入る、という話はなかったことになったと思う。


そっちの方が、あたしも嬉しい。



「香澄、コワイ」



ぐりっと眉間をつままれた。


どうやらシワが寄っていたらしい。



季節は春。


ぽかぽか天気。


ハラハラ舞う桜に、ヒラヒラ飛んで行く蝶。



そんな景色を見て、ハタとひとつ気がついた。



あたし…春から良いこと一個もないじゃん。



高校生になったら、それなりに充実した高校生活を送れると思っていた。


やっと憧れの高校生になれたのに。



「はぁ…」



< 145 / 528 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop