One STEP




あたしは瞳をキラキラ輝かせながら聞いてくる琴子に疑問を持った。



「あの先輩有名なの?」



だから片眉を上げて聞いてみたら、



「当たり前じゃないっ!」



興奮気味に琴子は言って立ち上がった。



頬がほのかにピンク色に染まっている。


それだけ好きなのだろうか? とあたしは首を傾げて琴子を見つめる。



あたしはあの先輩を知らなかった。



さすが綺麗なだけあるなぁ、と思う。


あの野次馬の集まり方からして、あたしみたいに知らない人なんて極僅かなのだろう。



同級生だけではなく、下級生にも人気っていうんだから凄いと思う。


同時に、あんだけ人気なんだから舞台の上でも堂々として演技ができるんだろうなぁと、ぽつりと思った。



ほら…違いすぎる。



「寺原先輩はみんなの憧れだからね~先輩のようにあたしもなりたいっ」


恋する少女のように辺りにハートを散りばめる琴子に、あたしは頬杖をついて微笑みながら、



「琴子ならなれるよ」



本気でなれると思ったから、嫌味じゃない、心から思ったことを口にした。


琴子にあたしが本気で言っていることが伝わったんだろう。


え?え? っと少し頬を赤らめて戸惑う琴子の姿に、やっぱり可愛いなぁと思った。






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