One STEP



琴子は先輩のように綺麗というよりも可愛い系。


フワッフワな、マシュマロみたいな髪が余計に可愛さをアップしているんだと思う。



特徴もなにもないあたしにとって、琴子は憧れの1つとも言える。



「んでんで、先輩と何話してたの?」



ズイズイっと顔を近づけてきながら聞いてくるもんだから、あたしは少し後ずさりながら、



「演劇部に入ってくれーって言われた…」



渡された紙切れを横目にそう言った。


琴子は羨ましそうにふーんと頷いて、横目であたしの持っている物を確認するといきなり奪い取った。



「これはなに?」



「あぁ、先輩たちが演劇やるんだって。見に行く?」



もちろん返ってくる言葉は分かってる。


あえて聞いてみただけ。



「あったり前じゃないっ!」



目をキラッキラさせながら言う琴子に思わず笑いが零れる。



今からワクワクと心躍る琴子とは正反対のあたしは、やっぱりもやもやとした気持ちでいた。


見に行くことになってしまったけれど、正直行きたくない。





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