One STEP



先輩はあたしに笑いかけると奥へと行ってしまった。



一番最初に出るのはあたし。


主役の、あたし。



大丈夫。
大丈夫。



その言葉を何度も何度も自分に言い聞かせる。



ゆっくりと目を閉じる。


深呼吸をして心を落ち着かせる。




「それでは始めます!!」




夏沙先輩の声があたしの中で木霊する。


あたしはその声と共に、勢いよく目を見開いた。



「大丈夫。香澄ならできる」



不意にそう耳元で囁いた美空先輩。



シャァァァっと勢いよく開いた幕。


同時に背中を押された。



その反動で駆け出す。




――――――――――――行ける!!




今なら胸を張って言える。



見てて。


見ててよ先輩っ!!



< 497 / 528 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop