《短編》切り取った世界
『…優等生だからエッチもオタクっぽいのかと思って心配してたけど。
どれだけの女の子を練習台にしたのかしら?』


そう言って明日香は、煙草を吹かしながらクスッと笑った。


相変わらずこの女は、平気で人の神経を逆撫でする。



『それと、さっきの続きだけど。
もしかして弘樹くんが遊ばなくなったのって、女の子が原因かしら?』


諦めたように俺は、明日香の指の隙間から煙草を抜き取った。


そしてそれを、吸い込み吐き出して。



「遠からず、近からず。」


俺の言葉に明日香は、噴き出したように笑って。



『素直ね。』


それだけ言った。



『じゃあ、あたしはお先に。
良かったら、また連絡ちょうだいね。』


さっさと着替えた明日香は、紙切れを俺の枕元に置いて。


髪の毛をかき上げながら、手をヒラヒラとさせて部屋を出た。


バタンと閉まったドアから、甘ったるい残り香が鼻をかすめる。


置かれた紙切れを持ち上げ天井に透かしながら俺は、

咥えたままの煙草の煙を吸い込んだ。


終わってみれば淡白なのは、きっと女の方だろう。


そんな風に思いながら、短くなったそれを消した。


ついでに携帯番号の書かれた紙切れも、丸めてゴミ箱に投げ入れて。


欲望を吐き出したあとに残るのは、虚しさばかり。


まだ少し気だるい体を起こし、脱ぎ捨てた服の上着から携帯を取り出した。


メールの着信が青い点滅を放っていて。



《テイクアウト?》


浩太からのメールに、思わず笑ってしまった。


どうすれば、こんな日々が変えられるのだろう。


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