裂果
「……ないなあ」



クローゼットを開けてみても、中にはお目当ての物はなく、ただ薄めの衣装ばかりが吊るされていた。

他の場所にあるなら、探さなければならない。

天音は腰に手を当てて、ぷうと頬を膨らませ辺りを見渡した。



右、左、とくるくる回り、そして今度は上を見る。



「なんなのそこなの……」



灯台もと暗し。ガムテープの箱は意外と近く、クローゼットの上に置かれていた。

わざわざそんな所に置くくらいなら中に入れろよ、と天音は思う。



クローゼットの背は高く、天音の手は箱にわずかに届かない。

そばにあった舞台用の椅子を何も考えずに引き寄せて、天音はその上に飛び乗った。



箱を手に取ったところで。

……足元から、めきっと、嫌な音が聞こえた。
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