Have a hope
第一章


「お兄ちゃん。」


兄は優しかった。

あたしが転べば、

すぐ絆創膏を持ってきて手当てをする。

あたしが泣けば、

優しく慰めてくれる。

あたしが愚痴をこぼせば、

何も言わずに聞いてくれる。


兄は優しかった。

とても優しかった。


だからあたしもお兄ちゃん子だった。


格好良くて性格もよくて、

兄は凄くモテていた。

あたしはと言えば、

可愛いけれど性格が悪いから

友達がいなかった。


教室で1人、席についている事が多かった。


周りには面食いな男子がいたけれど

あたしが無視をすれば何も言わずに去っていく。


結局あたしは1人だった。


そんな時も、兄は優しかった。

1つ上の兄は

わざわざ教室まで来てくれて。


兄はあたしのために、なんでもしてくれた。







でもそれは、あたしにとっては遠い昔の話。
< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop