Have a hope
第一章
「お兄ちゃん。」
兄は優しかった。
あたしが転べば、
すぐ絆創膏を持ってきて手当てをする。
あたしが泣けば、
優しく慰めてくれる。
あたしが愚痴をこぼせば、
何も言わずに聞いてくれる。
兄は優しかった。
とても優しかった。
だからあたしもお兄ちゃん子だった。
格好良くて性格もよくて、
兄は凄くモテていた。
あたしはと言えば、
可愛いけれど性格が悪いから
友達がいなかった。
教室で1人、席についている事が多かった。
周りには面食いな男子がいたけれど
あたしが無視をすれば何も言わずに去っていく。
結局あたしは1人だった。
そんな時も、兄は優しかった。
1つ上の兄は
わざわざ教室まで来てくれて。
兄はあたしのために、なんでもしてくれた。
でもそれは、あたしにとっては遠い昔の話。