アイシング、マイラブソング
当日、
僕は自転車で千架を迎えに言った。


付き合いたての頃は拒否られていたけど、
この頃には家まで送ってあげることはしばしばあった。


まだ少し寒い3月下旬。

この日は晴れで、

正午のこの時間はぽかぽかしていた。

ちょうど良い気候に眠気が襲い、

欠伸をしながら千架の家に着いた。


彼女は白いロゴシャツとデニムのミニスカートを身にまとい、

玄関先で飼い犬とじゃれ合いながら待っていてくれた。


「悠、おはよぉ」


「おはよ~。その服かわいいねっ」


「来るなり褒めないでよ。照れるじゃん」


「そう?あっ、わんこちゃんおはよぉ!」


「悠!わんこじゃない!ボビーといいます!」


「す、すまん…」


いつ見ても綺麗なお家。

ガーデニングが几帳面に施され、
緑のあふれる癒しの庭。
そこで駆け回るゴールデンレトリバーもまた似合っている。


「さて、行きますか。ボビー、いってきまぁす!」


「わんこっ、またな!」

「…悠のばか」


わんこ(ボビー)は尾っぽを振りながら、名残惜しそうなまんまるの目で千架を見送っていた。

それが何だか後ろ髪を引かれる。


―千架をお借りします。

バカみたいに、心の中で丁重にことわりを入れた。
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