アイシング、マイラブソング

【5―1】再確認

ペアリングも指になじんできた頃、僕らは街を歩いていた。

放課後、手を繋いで制服買い物デート。

言い知れぬ穏やかなしあわせが心地よかった。



「千架ちゃん?」



そんな中、突然後ろから声がした。

千架だけでなく、つい僕も振り返ってしまった。


なぜなら、
声の主は明らかに男のものだったからだ。



「あ、リュウさん!何でここにいるんですか?」



千架が僕と繋いでいた手をぱっと離して彼に駆け寄った。

僕はただその場に立ち尽くしかなかった。



―俺が居なくても、楽しそうだ。



聞き苦しい考えが浮かんでくる。

すぐそこに居る彼女らの会話が耳に入らないほど、僕には余裕がなかった。

かろうじて、千架が男に手を振って、こちらに戻ってくる姿が見えた。


「悠、ただいまっ」


反応できない。

何を言って、何をすればいいか分からない。
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