アイシング、マイラブソング
「美和~!」



お構いなしに祥が走って近付いて行く。

僕は後ろから歩いて向かった。



「一ノ谷君、久しぶり。ちょっと疲れてない?」


「受験勉強中だもの…」


「ははっ、言葉もちょっと情けなくなってる」


「美和は?」


「もう専門学校決まった」


「へ~いいなぁ」



二人の会話を少し離れたところで聞いていた。


すると美和が近寄ってきた。




「あたし…今日は、悠くんを待ってた。」




僕はあまりの驚きに一度びくっと体を震わせた。

彼女があまりに真面目な顔をしてるから、驚かざるを得なかったのだ。



祥はただならぬ雰囲気を察し

「俺、勉強あるから帰るわ。悠、モテる男はツライなぁ」

と場の空気を少し和らげてから去っていった。



「とりあえず、寒いからあの店入ろっか!」



僕は焦りながらも駅前のファーストフード店を差した。

美和は「うん」と頷いてタッタッと先に歩いていった。



後に続きながら、

美和が待っていた理由を必死で考え、

何を言われてもあまり驚かないようにしようと心構えをした。
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