アイシング、マイラブソング

【8ー1】おさんぽ

涙の卒業式から数日後、

とうとう千架が旅立つ日がやってきた。



気持ちはだいぶ落ち着いた…というよりは落ち着かせた、と表現した方が正しいかもしれない。




とにかく、友達として見送るんだから辛気くさい別れはしたくない。





―今日は絶対迷わない。





迷いが僕の調子を狂わせてきたこと、今までの経験で身に染みている。




―戻りたいなんて思わない。



―せめて見送りの時間だけは、絶対に。




覚悟を決めて家を出た。



腕時計は午前7時ちょうどを差している。

出発予定まであと1時間もあるけど

家に居るよりは気が紛れる。

てくてくと駅まで歩いた。




―千架を送ったあとの帰り道、俺はどういう気持ちでいるだろう。




1時間と少し後の自分を思い浮かべながら、まだ肌寒い早朝の大気の中を進んでいった。
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