アイシング、マイラブソング
「千架!!」
美和はその人に駆け寄っていった。
―やっぱり。
頭が目の前の人物を受け入れた瞬間、
心が揺れるのを感じた。
そんな僕をよそに
二人は何やら笑顔で話し始めた。
千架は走ってきたせいか少し呼吸が乱れている。
赤桃色のほっぺたに、
妙にそそられた。
僕はより暑さを感じ、
胸元のシャツを掴んでバタバタと襟首から風を入れた。
言い訳をすると、
この時の僕は男ばかりの工業に通っていたため、女の子に飢えているという因子があった。
「三上、久しぶりだね」
千架が僕に話しかけてきた。
「おうっ…お、ひさしぶり」
まだ動揺しながらも
なんとか返事をした。
可愛らしい笑顔。
気のせいか最後に会った卒業式の時より大人びて見えた。
同じ久しぶりでも、
美和に対しての態度と異なるのは…
中学時代の想いの違いのせいだろう。
美和は
友達だった女の子、
千架は
憧れだった女の子―。