アイシング、マイラブソング
その歌う声に
心を奪われた。
癒されるではなく
心地よいでもなく
まるで心ごと、
突風がすくっていったかのようだった。
曲は何度となく耳にしたことのある『エーデルワイス』なのだが、
彼女が歌うとまったく違うものに思えた。
先程までのうるさい雨音が嘘のように消え、
僕は目を閉じて聴き惚れた。
「ありがとうございました」
彼女は審査する立場の先生に対して言ったのだが、教室中が勘違いをした。
それがまるでプロの歌手がコンサートの最後にする挨拶みたいだったから。
そう聞こえて、
皆が賞賛の拍手を送った。
「えっ…みんなありがと」
千架は戸惑いながら照れ笑いで応えていた。
その瞬間、
僕は彼女に憧れの感情を持った。