【長編】雨とチョコレート
4月 - 3
「・・・そういえば、寺が敬語使うようなったのあれからだよな?」
畳の上に大の字になる。
あぐらをかいた奥寺は、情けない目を伏せた。
「私のせいで、坊が幼稚園に通えなくなったようなもんですからね。
『やられたら』・・・」
懐かしい言葉。
「『やりかえせ』か・・・」
奥寺のこのコトバに続いて完成されたあの名ゼリフは、以来、聞かなくなった。
「いまだに、なんで殴ったか覚えてないんですか?」
「うん・・・」
「ま、いいですけど」
じゃあ、いうな、って、笑った。