【長編】雨とチョコレート
早く来すぎたこと、なんて言い訳しようとか考えてたら、携帯がなった。
とっさに名前も見ないで電話に出た。
「はい」
声がうわずった。
「れいくんさ、くんの早くない?」
毎日きいてた声だった。
「え!?しの?
ドコにいんだよ」
「さっきから手ふってんのに無視なんだもん。
あ、あきちゃんたちね、ちょっと遅れるから先に入ってて、だって」
あたりを見回すけど、しのはいない。
「どこみてんの?こっちだってば」
電話越しの声と、門の陰から聞こえてきた声が重なった。