見えないモノと、指の銃。
エピローグ
「兄ちゃんが起きた!」
フッと、目が覚めた。
三枝に怒鳴ろうと思ってから、
体感時間は数秒も経っていない。
だけど真っ白い天井に、弟が覗き込んでくるのが見える。
……どうやらここは、病院らしい。
慌てて起き上がると、背中に痛みが走った。
長い間、寝ていたらしいから仕方も無い事だ。
ふと見た窓ガラスに薄く映りこむのは、
これこそ一番見慣れていた、俺自身の顔。
大喜びの八紀と、
感極まった様子の母さん。
父さんは仕事だろう、不在だ。
逆に、起きた時に2人が居る方がすごいだろう。
それにしても。
ちゃんと、俺の事も見てくれてるじゃないか。
目が覚めて、涙をためてよかったと、そう言ってくれてるじゃないか。
……これで十分だ。