宵の花-宗久シリーズ小咄-
「お願いでございます。お水を……」





懇願しているのか、彼女は両手を合わせて頭を下げる。









仕方が無い。


散歩は止めだ。




母の手落ちは、息子の僕が被るしかないだろう。




「もう…暑くて」




彼女は、苦しそうに表情を歪めた。




か細い声は、かすれている。






昼間の熱気が、まだ微かに地面から沸き上がる庭に、所在なさ気に立ち尽くす彼女。










気の毒に。






堪えられず、僕に声を掛けてしまったのだろう。









いたたまれないなくなった僕は、彼女を家の中へと招いた。











.
< 3 / 14 >

この作品をシェア

pagetop