扉を開けて
プロローグ

僕の家は僕の城だった

何代か続く旧家であり、両親がほぼ海外で仕事をしている
そんなそれなりに裕福な家に生まれた僕は、日本特有の造りをしただだっ広い家に一人で住んでいた
昼間だけ居る年老いた家政婦は僕に無関心
家政婦、キヨは食事や洗濯、掃除などのひと通りの家事をし、最後に夕食を作って帰っていく
両親など帰ってくる日の方が珍しい
ここはまさしく僕だけの城だった

それに甘えて僕は中学校に行っていない
子供っぽい周りに飽き飽きしていたし、勉学など一人でも出来る
行く必要性を感じなかった
最初は何度も訪れていた担任教師も諦めたらしくもはや顔も見せない

「おはようございます! 誉君はいますか!?」

それなのに未だに僕を学校に行かせようとする奴がいる
クラスの委員長である
責任感と正義感が強い、クラスに一人はいる面倒くさい女子の典型的パターンを具現化したような人間だった

「なんてね、いるのは分かっているのよ! 誉君、今日こそ学校に来てもらうわ!」

毎朝家の門の前に来ては僕に向かって叫んでいた
遅刻ぎりぎりまでいるあたりは大変迷惑だ

誰にどんなに言われても学校には行かない
僕の自尊心がそれを許さない
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