氷狼―コオリオオカミ―を探して
一足ごとにブーツの下の雪はギュッギュッっと軋むような音をたて、吐く息が白い煙のように宙に散っていく。


頬が、耳が、痛いほど。


大きな通りに出て、信号で立ち止まる。


先に信号待ちをしていた小学生がこっちにクルッと振り向いた。


えっ! 何?


白いフードつきのコートを着たその子供は、白い狐のお面をつけていた。


この子っていったい?



『雪の白馬を取り囲む

白い鼬(イタチ)に白狐(しろぎつね)』



古い昔話の一節が頭をよぎった。


あたしはその子が見えないふりをした。


この子が白魔なら、見えちゃいけないんだ。


だってほら

あたしの後から来たサラリーマン風のおじさんも狐のお面の子には気づかないみたいだもの。


その後もずっと、駅まで行く道の途中、時々目の端にチラチラと白い人影がよぎったけど、あたしは気づかないふりをし続けた。

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