氷狼―コオリオオカミ―を探して
「我らと行くほどではないな。わたしはどう見えるね?」


「子供に。でも声は普通に聞こえるし、冬の初めには氷狼も見た」


「我らと狩りをした記憶は消えていないのだな」


「こっちに戻って来ても消えなかった」


「チェイサーはどうだね?」


「あの人は十年分の年も取らなかったし、その間の記憶は一切ないの――っていうより、違う記憶を持ってる」


「違う記憶?」


「思い出が全部すり替わってるような。あたしの事も、一緒に育った幼なじみだと信じてる」

ハッと気付いた。

「そのせい? あたしは人間に戻ったんじゃなくて――」


「人間でいたいから、い続けている――おそらくは」

イタチがうなずいた。

「チェイサーの記憶がすり替わって、願い事の効力が薄れているのやも」
< 179 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop