氷狼―コオリオオカミ―を探して
「チェイサー?」


あたしが恐る恐る呼ぶと、彼はうなずいた。


「記憶が錯綜している。最後にお前がこれで――」

彼はカッターナイフを振った。

「氷狼を仕留めたのは覚えているのだが」


「自分が人間に戻ったことは覚えている?」


「戻ったのか?」


チェイサーはこめかみを押さえた。


「そうだ。お前がとんでもない願い事を口にして、俺はお前を完全に忘れるのが嫌でとっさに記憶をねじ曲げた」


「ねじ曲げた?」


「お前に関する記憶の一部を、別の人間に重ねようとしたのだ」


「逆になってたよ。あたしの上に別の人の記憶を重ねてた」

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