氷狼―コオリオオカミ―を探して
「それは頭にきて当然だよね」


「でしょ? でもね、本当は全部わたしが悪いんじゃないかなって思う」


あたしは驚いた。


「どうして?」


「わたしに悪い所があるんだろうって、そう考えていると人を許せるから。絶え間なく怒りを覚え続けるのはもう疲れた。わたしにだってなりたいわたしがいたはずなんだけど、もう思い出せないの」


「何もかも悪い人なんていないよ」


「どうかもう放っておいて。真実を見つめたら心が壊れるもの」


嘘でかためた繭の中ならば痛みもなく穏やかでいられるの?


それから少女は急に背中を丸め、膝を抱え、鋭い目つきであたしをにらみつけた。


「もう行って! わたしの心が怒りで満ちないうちに」
< 99 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop