記憶 ―流星の刻印―
今「兄上」って言ったわよね?
兄弟なのよね?
王子と従事者?
そう首を傾げたくなる程、後から現れた弟らしき人物は低姿勢だった。
「良かったじゃないか、王子様。お迎えが来てくれて。」
太磨はそう言うと、ラクダを歩かせてこの場を去ろうとしたのだけど…
「――この者たちを捕らえろっ!!この俺に無礼を働いたっ!!罪は重いっ!!」
偉そうな王子様の一声で、
私たちに兵士が詰め寄った。
「『えぇぇえぇ~っ!!?」』
焦る私たちの姿を見て、
王子様は大口を開けて笑っていたわ。
「――ちょっと!!失礼なのは、そっちじゃないのっ!!何で通りすがりの私たちがっ!!」
兵士たちに囲まれたラクダ。
声をあげる私の前に、兵士を纏める弟らしき人物が歩を進めた。
「…申し訳ありません。朱雀の王子の命令ですので。大人しく連行されて頂ければ、危害は加えません。どうか…」
表情も変えず淡々と言葉を発すると、ラクダから下りる様にと、私に手のひらを差し出した。
「――…っ!!」
私の反応を待つ弟の表情を、初めて正面から見た途端の事。
瞳と瞳が合った、
その瞬間の、出来事。
――ドクンッ。
私の心臓が、跳ねた。