記憶 ―流星の刻印―


「……はぁ」

溜め息は、何回目かしら。
もう覚えてないわ。


国境の関所は、
素敵な所だったわ。
景色的にはね?

進んでいた街道沿いの木々の合間から顔を出したのは、4つの国を隔てる広大な山の裾野。

決して越えられるはずが無いとされる高い山脈の、辛うじて人が手を加えて越えられる様になった部分。

そこにある関所は、
「越えるなら、ここしかありませんよーっ」と、自ら主張しているかの様な造りだったわ。
裾野にある唯一の人工物。


「……はぁ」

景色は綺麗だったのよ?
本来どの地にも染められないはずの、高い山肌。
普段見えている部分は赤茶色なんだけど、裾野の低い部分は緑色に染められていた。

それは草原の地側から見たからであって、砂丘側から見たら砂に埋もれているそうよ。

誰に聞いたか?
いつもの「オジサン」よ。

湿った風が当たる山肌。
緑豊かな植物が育つのは、草原の地側だけだそうよ。


「……はぁ。本当に…、いつまで待たせるのよ!!」

私の溜め息の原因は、それ。
どれだけ放置されているか。
もう数時間経つわ。


荷を下ろすのを手伝ってからお爺さんと別れて、関所の受付に来た私たち。

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