好きな人は、
すがりつくようにして向き合った三木先輩の髪は、黒かった。
フワフワの色素の抜けた髪の面影はない。
これはこれで凄く似合ってるよ、なんて言ったら彼は困ったように笑った。
身だしなみを除いて生活態度、成績共に優秀な先輩に言い渡された"処分"は、身だしなみを整えて国公立大学進学に向けて努めること。そして、反省文。
退学だのなんだの、心配しすぎだった自分が恥ずかしかったけれど、ホッとしてなんだか笑える。
赤い夕日に照らされ眩しい先輩を見上げると
彼はわたしの頬を擦り、涙を拭った。
「今回ばかりは麻衣に友達がいないの好都合だったのに」
「へ…」
「だれから聞いたの、謹慎のこととか…」
ふと、頭に沢村さんの顔が浮かぶ。
先輩、わたし友達出来たかもしれない。
ナイショ、と自慢気に笑ってやると、彼は涙を拭う延長線で頬をつねった。
そして一度俯くと、言いにくそうに口を開ける。
「麻衣は、俺が麻衣の居場所を守ったって言ったけど……俺が守ったのは、俺の居場所だよ」
「…それは、どういう……むぐっ」
「ちょっと黙って」
綺麗にわたしの言葉を遮った先輩は、ぶっきらぼうにわたしの頭を鷲掴んで胸元に押し当てる。
慰めにしては大胆だけど少し乱暴な気がしないこともない。
それでも喜んでるわたしはどうかしてる。なんならもう、ドMだ。
今はただ、先輩の言うことを聞いて体を預け耳を澄ませる。
「屋上に居たかったのは、俺。だから俺が鍵のことで処分受けても麻衣には関係ないし、麻衣まで処分受けたら厄介だし。だから何も言わなかった。」
「先輩、厄介とか言いつつわたしのこと庇って…」
「ない、しね」
「………」
雰囲気ぶち壊しだよ、三木先輩。