好きな人は、





「…理解できないって、何が………?」



あたし、何か変なこと言ったっけ、したっけ。


良くない頭なりに過去の記憶を手繰り寄せてはみるけれど、心当たりは浮かばない。



ますます訳がわからなくなって、とりあえず奏に目で尋ねる。





「亜子は、何が不満なの。」





しかし、逆に聞き返された。




何が不満って。
この間言ったじゃん。




言うと、彼は首を微かに横に振り、それが理解できない、と小さく呟いた。





「なんで?不満だよ。一ヶ月連絡ナシで、それが普通みたいな……不満に思ってるあたしがおかしいの?」

「仕事だから、仕方ないって言っただろ。夜中に電話して、お前は起きんのかよ。」

「それなら…っ!!会ったときにもう少し言葉があるじゃん!!」

「じゃあ亜子は、好きとか愛してるとか言っとけばそれで満足なわけ?毎日一言、それだけ電話で言えば安心なの。」

「…何いってんの……?」








気付けばお互い少しキツくなっていた言葉が一旦止まる。



話が絡み合わなくて、少しクラリとした。





そんなんじゃないのに。

そんなからっぽの言葉が欲しいんじゃないのに。




いつの間にか目に一気に涙が溜まっていって


ボロボロとそれが零れるように流れていくのがわかる。






違う違う、違うんだってば。






あたしの寂しさは奏にはないんでしょ?




それが悲しいんじゃん。





あたしばっかり、奏のこと好きで。

奏の気持ちは分からないままで。





不安で不安でたまらない。




なのに。






―――――じゃあ亜子は、好きとか愛してるとか言っとけばそれで満足なわけ?毎日一言、それだけ電話で言えば安心なの。







それはないよ………















「………もう、別れよう。」




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