部活探偵のツンデレ事件簿-タイム・トリッパー殺人事件-
そして扉の取っ手に手をかけながら壁の時計に目をやると、時刻は午後五時を少し回った処。特にいつもと変わらない終了時間である事を確認してから美術室を出て、職員室に向かって歩き出した。

★★★★★

西日が光の筋となって校舎の廊下に差し込んで、乱反射に浮かび上がる風景がオレンジ色に染まっている様に見える夕暮れ時。梅雨のせいも有って、夕日が差し込む事が珍しい、ここ最近久しい風景に直子は思わず見とれながら職員室に向かって歩を進める。

すっかり人気の無くなった校舎は、耳がツンとする程、しんと静まり返って、昼間、生徒達の姿で溢れかえっている時とは、全く違う表情を見せる。それは、何か魔物でも潜んでいるのではないかと思わせる風景で、学校に伝わる都市伝説は、昼と夜の極端に違う風景が生み出した幻なのかもしれない……そんな事を思う自分の思考が、自覚している以上に幼く感じて、直子は意味も無く笑みを浮かべた。

そして、窓から見えるグラウンドの銀杏並木がざわざわとざわめく様子を横目で見ながら、再びオレンジ色の光で満たされた廊下を歩み始めた。
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