天使の羽根

 たった一つの道標、満月はもう、どもにもない。

 途方に暮れた二人の背後に立ったのは道彦だった。

「私もそんな噂を聞いた事があります。でもそれは……満月が顔を出し輝く時だけ……夜が明けては無駄かと……」

 道彦の言葉は、二人の心を奈落に付き落とすには十分だった。

「そんな」

 穂高はガックリと肩を落とし、繋いだあずみの手を力の限り握り締めた。


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