天使の羽根

「豊子さん……キヨちゃんを智子さんだと思ってる」

 そっと呟くあずみの言葉に、穂高はキヨを見据えた。

「ああ」

「キヨちゃんも、何も言わないね」

「ああ」

「あんな小さな体で、何度も空襲にあって……辛くないのかな」

 穂高は、そっとあずみの肩を抱き寄せた。小刻みに震える肩の振動が、否応なく穂高に伝わる。




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