天使の羽根

 心が痛いから、悲しいから、何も見ないようにただ目指す場所を見据える。

 既に帰る場所に人気はない。

 誰もがこの現状を見たくなくて、どこかへ行ってしまったのか。それとも、家族を探しに行ったのか。あるはずのない家に帰ったのか。

 橋の周りは、しん、と静まり返っていた。

 空襲でも落ちる事がなかった橋の真ん中まで来た二人は、欄干に手をかける。

「ここまで、長かったな……」

 穂高の言葉に、あずみは微かに頷いた。
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