桜色
……急いで階段を駆け降りていくと、既に深兄はお母さんと話をしていた。
「……にしても…毎年毎年…連絡ぐらい寄越しなさいよね~。そしたらもっと事前に色々準備出来るのに…」
困った様に笑うお母さん。けれどやはり、1年ぶりの帰郷は嬉しいのだろう。
直ぐに明るい笑顔になった。毎年事前に連絡が無いとはいえ、嬉しくないはずはないのだ。
対しての深兄は、お土産を渡しながらお母さんにも全く劣らないような…それはもうほんとに傍観者の私まで笑ってしまうぐらいのとびきりの笑顔で、
「うん。まぁね~」
とだけ答えた。これがまたとてものんびりとした口調で。
……らしい。すごくらしいよね。けど…けれどそれは…深兄…答えにはなっていないと…思うよ……?
…ま…それもいつものことか
「……クスッ………」
一人傍観していた私は、2人の玄関でのやり取りに思わず笑いが零れてしまった。
慌てて手で口を塞ごうかとも思ったが………………止めた。
2人のあの様子じゃ…きっと聞こえていないのだろうから。
……ってか早く
上がればいいのに。