九我刑事の事件ノート【殺意のホテル】



「証拠は!
私が犯人だって決定的な証拠はどうするのよ!」



掴み掛かる彼女に動じることなく彼方は八部を呼んだ。

何かと思えば、靴の裏を見せろという。



八部の靴の裏は、赤茶色の汚れで塗れていた。



「えっと…多分、プールの給水用蛇口でついたんです。

あそこの床、錆びてるから」



「―――……」



五家宝は、床に膝をついて倒れこんだ。

おそらく気付かなかったのだろう。



「あなたが犯人なら、靴の裏に同じ赤錆が付着していますね。

ホテルの従業員でないあなたに、給水用蛇口の赤錆がついた靴の説明は一つしかありませんから。」













五家宝は、額を床に擦り付けて、悲痛な泣き声をあげた。




「………う」



爪で床を掻き、血が出るまで、強く。



「うう、う……ああああっ…」




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