boyshな女の子
中に入ると急いで着替え出した。
急いでたから、中に誰かいるなんて考えてすらいなかった。
「何君、怪我してんの?」
そう声をかけられるまで。
ばっと振り返るとそこには金髪の男が後ろの方の座席の間からヒョイと顔を出していた。
俺はその顔に釘付けになった。
「おーい、その包帯なんのために巻いてんのか聞いてんだけど?」
そんな質問俺の耳に入ってなんかいなくてボソッと呟いた。
「愁?」
その男の顔から真っ先に思い浮かんだ者の名を。
その男がピクッと反応したのを俺は見逃さなかった。
「俺のこと知らないの?」
そう言われてハッとする。
俺は知ってるじゃないか。
愁に顔がソックリで、髪だけが違う人間を。
あの旅館のテレビに大きく映し出されていたその男。