月夜の天使
今日も雨だった。

『この雨は僕と十夜が作ってる最後の結界だ。奴らは雨の日は絶対に現れない。』

『加奈は知らなければいけない。自分の存在の意味を』

昨夜の瑞樹の言葉が思い出される。

この雨も十夜と瑞樹が降らせてるなんて…。

でも今日は少し小降りになっているようだった。

「おはよ、加奈」

朝食を食べようとリビングに行くと、瑞樹がちょうど食べ終わって出るところだった。

昨日の悲しそうな表情とは違って、天使のような笑顔の瑞樹に安堵する。

よかった、瑞樹の笑顔がもどって。

瑞樹の笑顔だけでなんだかほっとできた。

瑞樹の笑顔には人をほっとさせる何かがある。

「加奈、今日の放課後迎えに行くから一緒に『天使の泉』に行こう。そこで十夜も待ってる」

「うん、わかった」

何が起こっても、私はこの笑顔を信じよう。

今はこの笑顔だけで充分だった。


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