月夜の天使
何日かぶりに来た『天使の泉』。

なんだか懐かしい。

ううん。

何日かぶりだからじゃない。

私、もっとずっと前からこの館を知っている。

きっと、この館はずっと昔から私たちを見守ってきたんだ。

「元気そうね。加奈」

祭壇の前で微笑む月野いずみ。

「十夜からいろいろ聞いてるわ。なかなか刺激があって楽しそうじゃない?」

そう言った月野いずみの笑顔はいじわるに見えた。

……なんて嫌味。

やっぱりこの人、ちょっと苦手。

加奈は顔がひきつるのを抑えて、笑い返した。

「加奈、あなたはまだまだ能力の覚醒には遠いようね。あなたの能力はほとんど精神的なものに左右される。でも、今のあなたでも、ある程度なら自分でコントロールできるかもしれないわ。」

「どうするんですか?」

「加奈、護りたい人は?」

「!?」

護りたい人……。

瑞樹や母親の顔が頭に浮かぶ。

でも護れなかった父親のことを忘れているわけではない。

「私は、お父さんを死なせてしまった。もう私のために、誰も死なせたくないの。」

「そう・・・。なら、そう強く願うこと。あなたの能力は生命を力づけるわ。あなたのエナジーは月から譲り受けたもの。加奈、あなたは、生命の生死の行方すらその手に握っているのよ」

生命の生死……。

とても信じられない。

私にそんな力があるなんて。


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