月夜の天使
「加奈、あれから瑞樹の様子はどう?」

月野いずみは意味ありげな口調で訊ねた。

「瑞樹?最近なんだか元気がなくて。家でも、部屋に閉じこもって、私と顔を合わせないようにしてる気がして気になって」

「そう・・・」

月野いずみがため息をつく。

「加奈、瑞樹の魂の封印はもうすでに解けている」

壁に寄りかかって会話を聞いていた十夜が口を開いた。

「十夜、それってどういうこと!?」

十夜は一面の月見草を見つめながら答えた。

「前世の話だ。瑞樹はカナンを護るために深い傷を負った。その傷は生まれ変わった今でも消えていない。その後遺症で瑞樹は魂を封印することができなくなってしまった」

瑞樹が、魂を封印することができない・・!?

「じゃ、じゃあ、瑞樹はどうなるの?」

十夜が真っ直ぐに加奈を見つめる。

「カインの一族に出会えば、瑞樹の魂は奪われるかもしれない。そうなれば、瑞樹の永遠の命は尽きる。だが、瑞樹はそれよりも何よりも、加奈、君を傷つけるかもしれないことを恐れている。瑞樹の魂が奪われれば、瑞樹の能力は強力だ。俺たちでも、止められるかどうか・・・」

瑞樹!

そうだったの。

私を護るために瑞樹の命が危険にさらされているなんて。

瑞樹が永遠にいなくなってしまうかもしれないなんて!!

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