群青ホームラン



確かにそうだ。別に言わなかったら俺は知らないままだったし、言ったところで長崎に得はない。

それとも冴木の口からバラされるのが怖かったからか?

いや、冴木がわざわざ言うヤツじゃないことを長崎だって知ってるはずだし。

なっちゃんに対して罪悪感が生まれたから?


それにしたって、それはなっちゃんに自白すればいいことであって、なんで俺に……。

冴木は答えを知っていそうだったけど、それ以上なにも言わなかった。


いつの間にか放課後になり、俺は今野球部のウォーミングアップ中。部活の時は他のことなんて考えないのに、今日はどこか上の空。

そのせいで取れるボールも取りこぼし、仲間からは渇をいれられる始末。


俺ははっきり言って恋愛経験なんて全然なくて片思いは多いけど、つまり実ったことがないから恋に関しては無知なわけで……恋ってやっぱり難しい。


「竹田交代だ。来週は試合だから気合い入れろよ」


ハッと我に返るとバッターの打順が俺に回ってきていた。

やばい、やばい。部活に集中してないなんて俺らしくない。

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