パシれメロス【短編】
濡れて張り付く前髪をかきあげ顔を手のひらで拭う。

そして殴られて少し切れて血のにじんだ口元を乱暴に手の甲で拭いながら目を開き僕を殴った相手を目で探す。

そこにいたのは……

「お巡りさんA!」

「A?Aって何だ?」

「いえ何でもないです……ゴニョゴニョ……」

彼はしばらく厳しい顔で肩を怒らせていたが、やがて「フッ」と息を吐き表情を緩めるとヤレヤレといった風に両手をユルく広げた。

「行きも帰りも見てたからお前の身体能力が高いのはわかってるが、それでも無茶しすぎだろ。普通の奴なら確実に死んでるぜ?」

いや、普通の奴なら迂回してると思います。と思ったが口には出さない。

彼が本当に心配してくれているのが判るから。

その辺がやっぱりBとは違いイイ人だ。

僕は言葉もなく彼に近づき、感謝の気持ちを込めてそっと首筋に当て身を食らわせて意識を飛ばした。

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