パシれメロス【短編】
どこかの真っ白な空間にヤキソバパンがこの上なく魅惑的に浮かんでいる。

それを掴もうとゆっくりのびる僕の手と見知らぬライバルの手。

しかしライバルの手の方がわずかながらリードしているようだ。

このままでは負けると判断した僕はターゲットをライバルの手に変更した。

今のばしている右手でライバルの手を払いのけて、入れ替わりに左手で栄光のヤキソバパンを掴む作戦だ。

感覚的にはともかく実際には刹那の判断だが、これが出来なければ購買部では生き残れない。

僕は勝利を確信し、その左手はまだ届かぬヤキソバパンの感触さえも感じられる気がした。

しかしそれは誤りであり油断だった。

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