言霊(詩集)
“自分”という名の“他人”を映す鏡



『“自分”という名の
“他人”を映す鏡』




ボクはボクに
触れられない…―
キミはそこに居るのに…
ボクはここに居るのに…
キミへと
伸ばした手が
伝えるのはいつも
冷たさと固さだけ…
「…ねぇ、キミは誰?
…ボクは、誰?」
キミはいつも笑うんだ。
「さぁ。」
肩をすぼめて笑うんだ。

ボクはボクが
分からない…―
向こうのキミは
いつだって笑うだけ…
ならば…
いっその事
壊してしまおうか。
この手でキミを……―。
「…ねぇ、消えて。」
最期もキミは笑ったね。
「いいよ。」
肩をすぼめて笑ったんだ…。

手の平から
滴る赤い液体に
燃えるような熱さが…
ボクに教えたよ。
「ボクは…生きるヒト…ニンゲン
だったんだ……。
僕は君で君は僕だったんだね。
…ねぇ、キミは…
知っていたんだね?」
きっとキミは笑うんだ。
「さぁ。」
肩をすぼめて笑うんだ。

キミを壊したら
キミは空へと消えてった。
その時
世界は光を受け入れた。

―君はボクで
僕はキミ―

僕は光の眩しさに
笑ったんだ…―。
生まれて初めて
肩をすぼめて笑ったんだ。

“自分”という名の“他人”
を抱えた僕は今…
光へと消える……―。
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