君がいたから

六限目のホームルームの時間
もちろん、先生の話なんて
俺の耳には一切届いてなかった

朝からずっと考えていた
この数日間
なぜ、自分はずっと上総のことを考えているのか、と

そして、漸くその答えは出た
自分は、上総が好きなのだと言う答え
一目惚れだったんだと思う。多分

「・・・ってことで、明日までにこの課題をしておいてください」

先生がそういい残して
教室をでていく
それを確認してから
俺はくるりと後ろを振り返った

「林(リン)!わりぃ、明日の朝課題写させてくれ」
「また話し聞いてなかったのかよ・・・」

林は深いため息をつきながらそう言う
そんな彼の様子にもう一度「わりぃ」と両手の平をあわせて言った

「いいよ、明日の朝見せてやる」
「サンキュー!!じゃ、俺ちょっと行く所あるから」
「はいはい、いってら」
「サンキュー」

最後にそういい残して
俺は急いで教室を出た

「やっと、青にも春が来たか
 あんなことがあったからもう無理かと思ったけど
 よかったな、うん」

青が教室から出て行った後
林は、小さい声でそう呟いた
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