君がいたから
「あ、青く~ん」
「何?上総」

名前を呼ばれて
呆れたような顔で振り返る
声の主の名前は、よく知ってる

「あのね、あのね」
「ちょ、上総落ち着け」

俺の周りを走り回る上総を
止めるために声をかける

ほんと、
歌を歌っているときとは別人だ

「耳貸してっ」

やっと落ち着いて
今度は笑顔でそう言った

ここは大人しく言うことを聞いていたほうがいい
少し屈んで上総の背の高さにあわせた

「私、先輩に告白する!!」
「へっ!?」

思ってもいなかった上総の言葉に
間抜けな声が口からこぼれる

「だーかーらー三河先輩に告白するっ」
「えーあ・・・」

そうか、上総知らないんだ
先輩に、彼女がいるって

言ったほうがいいのかな?


「なに?」
「いや、悪い
 なんでもない、頑張れ」

心にも思っていないことを言葉にしてしまった
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