君がいたから

「大丈夫?」
「うん」
「顔、青いよ?」
「大丈夫、もうそろそろ帰るな」

笑顔を作って言葉を発した

今、倒れるわけにはいかない
これ以上
上総に心配はかけられない
きっと、上総の方が俺より何倍も辛いだろうから

そう自分に言い聞かせて
ドアノブに手を掛けドアを開く

「それじゃ、またくるよ」
「うん。ありがと」

手をふって、そういった上総に
手をふって返した

部屋の外に出て、ドアを閉める

・・・元気そうでよかったな

そう考えながら廊下を歩く

「永美くんっ」

後ろから名を呼ばれて振り返る

「智華さん・・・?」

声の主の名を呼んだ瞬間
視線が揺らいだ

・・・・ぁ、しまった


そう思ったときにはもう遅く
意識が遠ざかっていった
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