毎日がカレー曜日
「兄は……」

 しかし、サヤは別に気にしていないのか、直樹の言葉にさえぎられることなく、笑顔を浮かべた。

「兄のヤイバは…いまも外国で修行中です。ただ、今度の修行場は、タイで…困ったことに女人禁制なのです。修行も1年近くかかるらしくて、見知らぬ土地で一人暮らしをするより、日本に帰った方が安全だろう、と。それで、直樹さんのお世話になることになったのです」

 ぺこりと兄に軽く頭を下げると、茶髪メガネはえっへんと胸をそりかえらせた。

 つくづく偉そうな男である。

「ただ、そのヤイバの手紙がついたのは、昨日だったがな。サヤ嬢が日本に到着したのも、昨日だ」

 いや~あっちの方は、場所によって郵便物の到着に時間がかかるもんだ。あ、コレうまいね。

 メガネを光らせながらも直樹は、食事もしゃべりも淀みない。

「え? じゃあいま、どこに住んでんだ?」

 日本で、何も準備されてない状態で帰国したのは分かった。

「はい、インドで知り合った方のご親戚が、近くでインド料理店を出してらっしゃるので、2階の部屋をお借りしてます」

 なるほど。

 それで、あの朝食と、この昼食になった、というわけか。

 帰国ホヤホヤで、どうやってあのナンを焼いたのかと思えば、そういうカラクリだったのだ。

「というわけだ、探偵クン。納得したかね」

 説明したのは、すべてサヤだというのに、どうしてこの男は自分の手柄のように言うのか。

 非常にムカつく男だ。
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