毎日がカレー曜日
「おい、愚弟」

 巡る意識を、うまく決着づけきれていない孝輔は、兄に呼ばれたことにすぐには反応できなかった。

 はっと顔を上げると、メガネとサヤがこっちを見ている。

「食事が終わったら、機材一式準備しろ。室内測定器まで全部、な」

 ニタリ。

 笑いながら、直樹は弟に大仕事を押し付けた。

 室内測定器なんて大掛かりな機材は、めったに持ち出さない。

 普段は、小型のハンディタイプのものだけだ。

 広範囲から霊のいる場所を探すためのもので、主に、霊能力ゼロ以下ブラザーズの感知できない相手に使われる。

 要するに、よほど反応が小さく見つけにくい場合のみ、室内測定器を持ち出すのだ。

 これが、何しろ重い。本体だけで30キロだ。

 しかも、多少かさばるので、兄のセルシオには積めない。

「お前には、立派なアコードワゴンがあるだろ?」

 あー。

 何となく分かった。

 いまいち確証はないのだが、直樹はサヤと二人きりになりたいのか。

 孝輔を追い出すために、でっかい機材を口実に別の車を出させようと。

 色気づいてんのか?

 うさんくさく兄の顔を見るものの、相変わらず読みがたい表情だ。

「へーへー、何でもどうぞ」

 アホらし。

 半ばヤケ気味に、孝輔は耳をかいた。

 仕事、人情、色恋。

 いやーな組み合わせになってきたぜ。

 心なしか、カレーがまずくなった気がした。
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