【短編】棘のない薔薇
「――――大切にしてるのね、白石さんのこと」
心配している二人を置いて、誰もいない廊下に出た。
下から睨まれるような視線を受け、俺は薄く笑った。
大切?
美咲をか?
「そりゃあんたよりはずっと、な」
「…ほんと可愛くないわね」
ハァとため息を漏らし、ぽってりとした唇を拗ねるように突き出した。
それを見下ろしながら俺は口を開く。
「何の用だよ」
思っていたよりもずっと低い声が出た。
さっきからどうもイライラが止まらない。
猛々しいまでの感情が独り歩きする。
「また様子見か?そんなに俺のことが気にい…」
「自惚れないでよ、蓮」
俺の言葉を凛とした声で遮り、アイツは笑う。
「いつも言ってるでしょ?私はあなたを―――…」
ゆっくりと動かされた口に、俺は細い腕を引き寄せる。
甘い薔薇の匂いが鼻を掠め、それを振り払うように俺は真っ赤に熟れた唇を乱暴に塞いだ。