希望という名のきみへ


「頭で理解することは無意味だ」


その言葉と共に、わたしは永遠に抱きしめられていた。


彼はいつの間に、あの崖の上から戻ったのだろうか?

その胸の鼓動は、心なしか早く忙しく動いていた。


「ミク」


確かに耳に届いたその声に、顔を上げた。


「言葉は、名を呼ぶ為に存在する。

名は、その者に対する尊厳であり、そのものである。

それ以上に、名を必要とする理由があるか?」


ミテラでは、個体ナンバーでしかなかった自分の名が、わたしそのものであったとは……


「トワ」


わたしも彼の名を呼んだ。

その響きに彼を思い、彼の存在を確かめた。


なるほど、それ以上の理由などある筈がない。
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